組織風土の特徴を掴む その91

適切な人は表現が難しいですが、会社にとって適切か否かであって、世界標準があるわけではありません。

しかし、一例として以下の説明をさせていただきます。

アメリカの有名企業「HP(ヒューレットパッカード)」の創設者のビル・ヒューレットとデービッド・パッカードの二人は目標では無く、人について考えていました。

優れた企業を築くのには、自分達に似た価値観と価値基準を持つ人を集めたいと考えていたのです。

そしてそれを考えただけでは無く、実際に実践して見せたのです。

1937年の設立総会議事録によれば、まず、きわめて幅広くみた電気工学の分野での製品の設計・製造・販売を事業にすると決定しました。しかし、議事録にはその直後に、「何を製造するかの決定は先送りした」とあります。

創業期には何を製造するかはほとんど問題ではなく、技術の進歩に貢献し、二人と志を同じくする人たちとともに企業を築いていけるのであれば、それだけで良かったのです。

HPは後に会社が発展しても「最初に人を選ぶ」という原則を守り通していました。

第二次世界大戦が終わり、軍の契約が打ち切られて売上高が減少した時期に、政府の研究機関から優秀な人材を大量に引き抜きましたが、このときに何の研究を任せるかはまったく決めていなかったのです。

そして採用した彼らはのちに大きな成果をあげていくのです。

しかし、誰でもよいから優秀だから採用した訳ではありません。

もちろん自分達の価値観と近い人を採用した事は間違いありません。

適切な人は管理する必要がありません。

では、会社は何を管理するのか?

それは【システム】を管理すればいいのです。

もし、あなたの会社で【誰かを管理しなければならない】と感じたら、採用の失敗があったと認めた方が良いと思います。

もちろん、適切な人であっても、指針を与え、教え、導く必要はあります。

しかし、しっかりと管理する必要はありません。

不適切な人たちがいる会社の場合は、様子を見守り、決定を遅らせ、別な方法を試し、3回目、4回目のチャンスを与え、状況が良くなるように期待し、その人達をうまく管理する方法を試すために時間を使い、その人たちの足りない部分を補う小さな仕組みを作ります。

それ以外にもさまざまな手を打ちますが状況は良くなりません。

自宅に帰っても、その人達をどうすべきか考え込み(パートナーに愚痴をこぼすこともしばしば)時間を取られます。

悪い事に、その人に時間とエネルギーを費やしている分、指導や共同作業で適切な人達との関係を深めたり、強めたりしていく事が出来なくなってきます。

一向に前進しない状況が延々と続き、最後に本人が辞めていくか、我慢しきれなくなって行動するしかなくなってきます。

言葉にしなくてもご理解いただけると思いますが、不適切な人がいると、周囲の適切な人達に対して不当な行動を取る事になります。

不適切な人がしっかりと仕事をしないので、適切な人達が尻拭いや穴埋めをするしかなくなります。

確認ですが、不適切な人の定義は【その会社の風土や価値観やビジョンに対して適切ではない】です。

ですから、上場企業に勤めていたからといっても、中小企業には合わない方も大勢いらっしゃいます。

それは会社の規模が問題だからではありません。

その会社にとって適切か否かが問題なのです。